マシュマロが我慢できる子どもは成績が良くなる、がしかし。

こんにちは、ギール里映です。

 

食べ物とカラダの関係を探る実験は、
国内外で無数に行われていますが、

 

その中でも有名な実験に
マシュマロテスト
と呼ばれるものがあります。

 

これは、１９６０年代に、
スタンフォード大学に勤務する心理学者
ウォルター・ミシェル博士が、
４歳〜５歳の子どもたちを対象に
行った実験です。

 

ミシェル博士は子どもたちを部屋に集め、
それぞれの前にマシュマロを置いて
部屋の外に出ます。

 

子どもたちには、
「もし博士が帰ってくるまで
マシュマロを食べずに我慢できたら、
ご褒美にもう一つマシュマロをあげるよ」
と言い残します。

 

そして１５分後に部屋に戻ると、
我慢できずに食べてしまった子と、
頑張って我慢できた子にわかれました。

 

このぐらいの歳の子どもでも、
我慢できる子と、
我慢できない子がいるという
興味深い結果でした。

 

しかし実験は、
これで終わりではありません。

 

今度はミシェル博士が待つばんです。

 

子どもたちが大きくなって、
学校に通うようになると、

 

マシュマロを我慢できた子たちは
我慢できなかった子たちより
成績がよい、ということがわかりました。

 

そして大人になると、
我慢できた子たちは
いい職につき、
ドラッグなどトラブルに巻き込まれる
可能性も低いこともわかりました。

 

きちんと我慢できる子、
つまり自制心のある子は、
よりよい人生を歩む確率が
格段に上がるのです。

 

その後の行われた数々の研究でも、
ミシェル博士の見識が正しいことが証明され、

 

アメリカの教育現場では、
いかに子どもたちに自制心を育ませるか、
というプログラムが組まれています。

 

しかしさらなる研究で、
面白いことが明らかになりました。

 

ジョージア大学のブロディ博士が２年前に行った研究では、

 

約３００人のアフリカ系アメリカ人１７歳の学生を対象に、
自制心＝セルフコントロール能力の高さを測りました。

 

その指標として、
学生たちのボランティア活動への積極性や、
感情の浮き沈み、
攻撃性、薬物使用の有無などが
採用されています。

 

その後子どもたちが２２歳になった時点で、
ブロディ博士は学生たちの
血液検査をしてDNAメチル化の程度を測定します。

 

その結果、
驚くべきことがわかりました。

 

経済的にも豊かで、恵まれた環境の学生たちは、
自制心が高ければ高いほど、
細胞が若いことがわかりました。

 

しかし貧しい家庭環境の学生たちは、
自制心が高ければ高いほど、
その細胞が老化していることがわかったのです。

つまりブロディ博士の研究結果は、

 

貧しく生まれた人は、
努力して自制心を身につけると、
成功を手にするのと引き換えに、
カラダの老化を早めて健康を損ねてしまい、

 

経済的に豊かな環境に生まれた人は、
自制心を身につけると
社会的に成功すると同時に
健康で長生きする、
ということなのです。

 

しかし、なるほど、
ある意味納得です。

 

貧しい、にも程度があるし、
豊かな、にも程度があると思いますが、

 

やはりあまりにも経済的に
苦しい状況での生活は、
自制心のあるなしにかかわらず、
その心身に及ぼす毎日のストレスから、
健康は害しやすくなると思います。

 

また超・超・超リッチな環境でも、
毎日食べたいだけ食べ、
やりたい放題の生活をしていたら、
それはそれで寿命を縮めてしまいますよね。

 

子どもにどんな人生を歩ませようか、
と思ったら
やはり親にある程度の
経済力が要求されてしまうのは、
今の物質中心社会では
仕方のないことなのかも
しれませんが、

 

ただ経済的に豊かだけでも
子どもの可能性は開花させられないんですね。

 

明日も、子どもに見せられる背中を保つべく、
いろんな意味で
がんばろうと強く思うのでした。

 

（出典：The Economist, ２０１５年７月１８日　No Good deed goes unpunished）
http://www.economist.com/news/science-and-technology/21657768-self-control-improves-your-prospects-it-may-harm-your-health-no-good-deed